世界を濡らす、やまない雨


「杏香がこういうの好きじゃないってことは知ってるんだけど、参加する予定だった女子メンバーの一人が来れなくなっちゃって。杏香に彼氏いるのは知ってるし、人数合わせってことでいいからさ」

「でも……」


土曜日の予定は空いている。

けれど、怜のことを考えると有里の誘いを受けることが躊躇われた。

合コンに行くことを怜に正直に話したら怒られるだろうし、黙って行ってあとでバレたらもっと怒られる。

最悪の場合、彼と一緒に住んでいるマンションにいられなくなるかもしれない。

頼まれごとをなかなか断れない私だったけれど、有里のこの誘いには嘘でも首を縦にふれなかった。

けれど他に代替要員がいないのか、有里が珍しく必死に頼んでくる。

ランチを食べ終わるまでの間ずっと言葉を濁しながら渋り続けた私だったが、有里の強い誘いに押されて最終的に「少し考えさせて」と返事した。

それがあとで自分の首を絞めることはよくわかっているのに。はっきりと断りきれなかったのだ。


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