世界を濡らす、やまない雨


私が一人で仕事を再開していると、しばらくしてから他の社員がぽつりぽつりと戻ってきて午後からの仕事につき始めた。

無人で静かだったフロアに、少しずつ昼休み前の雑音が戻ってくる。

フロアに人が半分ほど戻ってきたとき、仕事の区切りが少しついた。

パソコンから顔を上げて息をつく。

顔をあげると、戻ってきている女性社員の大半の化粧が昼休み前より濃くなっていた。

それで私も、自分が化粧直しをしていなかったことを思い出す。

仕事に区切りがついたし、少しだけなら。

そう思って立ち上がると、私は小さなポーチを持って静かに化粧室へと向かった。

化粧室は、私が働く課のフロアの入り口を出て、廊下を真っ直ぐ進んだ突き当たりにある。

化粧室の手前に差し掛かったとき、数人の女子社員が話す声が聞こえた。


「午後からの仕事、だるいよね」

「ねぇ」

彼女達はお互いに愚痴を言い合っているようで、その中には有里の声も混ざっていた。

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