世界を濡らす、やまない雨
苦しいのに、やっぱり私は何も知らないフリをして笑う。
「土曜日、大丈夫。合コン、行くよ」
何でもない声で言うと、有里が私を振り返って笑った。
「よかった。また、時間連絡する」
有里と一緒にいる二人も、顔を合わせて笑う。
よかった────?
そう思うのは、都合のいい引き立て役がきまったから?
好きでもないのに一緒にいるのは、自分をよく見せるために都合がいいから?
笑いながら歩いていく有里の背中を、唇をきゅっと引き結んだ固い表情で見送る。
責めるべきは有里じゃない。
悪いのは、彼女の優しさを勘違いしていた私。
苦い思いなら散々してきたはずなのに、それを忘れていたのは私。
有里の笑い声が遠ざかっていっても、胸に湧きあがる苦い感情は治まらない。
喉の奥にどんどんと溜まって。
ただ溜まり続けるばかりで────、
渇かない。