世界を濡らす、やまない雨
合コンが行われたのは、落ち着きのあるイタリアンの店だった。
相手側の男性たちのうちの一人が、選んでくれたらしい。
比較的名の知れた商社に勤めている彼らは、全体的に礼儀正しく爽やかな雰囲気だった。
席に座って乾杯をすると、自己紹介が始まる。
「じゃぁ、まず俺たちから」
向かい側に座った男性たちが、一人ずつ順番に名乗っていく。
テーブルの端に座っていた私は、彼らの自己紹介を聞き流しながら、白いテーブルクロスに置かれたビールグラスに浮かぶ白い泡が段々薄くなっていくのをじっと見ていた。
「────智です。よろしく」
私の向かいに座る男が自己紹介をし終わったとき、ウェイターがパンを運んできた。
香ばしい匂いに少し視線を上げると、向かいの男と目が合った。
彼の目尻が微笑むためにほんの少し下がりかけたところで、私はぱっと視線を落とす。