世界を濡らす、やまない雨
それで、私は気付く。
彼は私の声が聞こえていないのではない。聞こえていて無視しているのだと。
私はそれ以上怜に声を掛けるのを辞めると、手にしていたスーパーの袋を持って台所へと向かった。
買ってきたばかりの食材を冷蔵庫の中に入れる。そうしながら、私はしゅんと小さく鼻を啜った。
怜が不機嫌だと、私はいつも泣きそうになる。
そして考える。
どうすれば彼は機嫌を直してくれるだろう。
どうすれば彼は私に声を掛けてくれるだろう。
どうすれば彼は私を好きでいてくれるだろう。
考えて考えて、心が不安で押しつぶされそうになる。
一緒に住み始めてもう二年になる恋人の大崎怜は、優しくて……
そしてとても冷たい人だった。