世界を濡らす、やまない雨
「すみません」
寄りかかるようになってしまった後ろの人に謝ろうと、狭いエレベーター内で少し首を動かす。
後ろのその人の顔は私の頭一つ半分くらい上にあり、よく見るとそれは同じ課の課長だった。
私に寄りかかられた課長は、迷惑そうな素振りを見せることもなく、ただ私に微笑む。
満員のエレベーター内だから、仕方がない。
あとできちんと謝ろう。
そう思い、私は顔を正面へと戻した。
エレベーターは下の方の階を通過し、ゆっくりと上へと登っていく。
その途中、ふと首筋に息のようなものがかかるのを感じた。
初めはエレベーターの空調かと思ったが、それは少し生温かくて、段々と短い間隔で首筋へとかかってくる。
それは何だか、嫌な感じだった。