世界を濡らす、やまない雨
私は荷物を置くと、止まらない震えを押さえるために自分の身体を両腕で強く抱きしめる。
ようやく震えが止まり、デスクに戻ると、課長も既に戻ってきていた。
課長はデスクに座り、いつもと変わらない顔で部下に指示を出していた。
私が彼の前を俯きながら通り過ぎても、声をかけてくることはなかった。
さっきエレベーター内で起きたことなど、まるで嘘のように。
けれど、まだ首筋に残る生温かい息の感触が、それが嘘ではなかったことを物語っていて……
どうしようもなく、恐ろしかった。