世界を濡らす、やまない雨
私が怜に背中を向けながら小さく鼻を啜っていると、後ろから低い声がした。
「なに泣いてんだよ」
怜の低い声が、2LDKのマンションに冷たく響く。
「ごめんなさい……」
私のすすり泣く声が、怜をますます不機嫌にしたようだった。
手の平で鼻の下を拭って、息を止めるように泣き声を押さえる。
「今日は早く帰るって朝から言ってあったよな?いつまでも遊んでねぇで、とっとと帰って来いよ。俺は仕事で疲れてるんだ」
「ごめんなさい。すぐにごはんの用意するから……」
小さな声で謝ると、いそいそとキッチンに向かう。
今日は怜が休日出勤で、私は友人に誘われて映画を見に行っていた。
遊びに行っていた私が怜よりも帰りが遅かったことで、彼の怒りを買ったらしい。