世界を濡らす、やまない雨
だから私はすっかり勘違いしていた。
私は自分を、透明な見えない仮面とマントでしっかりと守れているのだと。
何事もなかったようにしていれば大丈夫。
他人に合わせて、うまくやっていれば大丈夫。
何だ、簡単だ。
そう思って高を括っていたその矢先、私は課長に肩をたたかれた。
「道木さん。今帰りなのかな」
仕事を終えて、ちょうど会社のビルを出たところだった。
時間帯は、定時を一時間回った頃。
ビルの出入り口からは、同じ会社の社員たちが間隔を開けて何人も出てきていた。
そんな中、課長は平然と私に声をかけてきた。
いかにも、上司だという顔をして。