世界を濡らす、やまない雨
「ここからはまだかかるから、タクシーに乗ろう」
課長が私を振り返り、唇の片端をきゅっと引き上げた。
「あ、あの……私は」
一歩後ずさった私の手首を課長が強い力でつかむ。
どこまで連れて行かれるのだろう……
首筋から背中にすーっと冷たいものが走るのを感じた。
「さぁ、乗りなさい」
穏やかだが有無を言わせない課長の声に息を飲む。
ゴクリと、はっきりと音が聞こえるくらいに喉がなった。
「さぁ」
課長が私の手首を引き、タクシーに押し込もうとする。