世界を濡らす、やまない雨
「道木さんも参加するんだよね、飲み会」
目の前に立つ彼は、小首を傾げて微笑みかけてくる。
飲み会────?
大学────?
彼の顔に見覚えがないばかりか、彼の話はどれもピンと来なかった。
人違いではないだろうか……
そう思って口を開きかけたとき、課長がつかんでいた私の手首を離した。
「道木さん、予定があるなら初めにちゃんと言ってくれたらいいのに」
「え?」
課長を見上げると、彼は唇に笑みを浮かべながら私を見ていた。
けれど微笑む課長の目は、少しも笑ってはいなかった。