世界を濡らす、やまない雨
角谷にもう一度礼を言って手を振ると、ホームの方へ歩き出し始めた私を彼が呼び止めた。
「道木さん、ちょっと待って」
振り返ると、角谷が私の方に駆け寄ってきた。
角谷は慌てた様子でスーツのポケットからスマホを取り出すと、少し早口で私に言った。
「あの……連絡先、聞いていい?」
「え?」
角谷を見上げて少しばかり目を見開くと、彼はやや斜め上に視線を向けながら首の辺りを人差し指で撫でるように掻いた。
「この前の合コンのとき、道木さんの連絡先だけ聞き損ねたから」
「あぁ」
納得して頷くと、角谷はどこかほっとしたような表情を浮かべた。