長い夜の甘い罠【完】


地下駐車場から左ハンドルの黒い車に乗り、男の運転で行き先の決まらぬまま車は走り出す。

これじゃあ何だかデートみたいじゃない。デートなんてしたくないわよ、私。


「行き先は決まったの?」

「嫌、お前に任せる」

「任せるって言われても困るわ。何処も思い付かないもの」

「ならお前の好きなモノは何だ」

「好きなモノ……」

「まさか好きなモノまで無いとか言うんじゃねぇだろな?」

「…海かしら」

「海へ行くか」


海なんて、子供の頃以来、行ってないわね。凄く久し振りだわ。


< 24 / 231 >

この作品をシェア

pagetop