長い夜の甘い罠【完】
地下駐車場から左ハンドルの黒い車に乗り、男の運転で行き先の決まらぬまま車は走り出す。
これじゃあ何だかデートみたいじゃない。デートなんてしたくないわよ、私。
「行き先は決まったの?」
「嫌、お前に任せる」
「任せるって言われても困るわ。何処も思い付かないもの」
「ならお前の好きなモノは何だ」
「好きなモノ……」
「まさか好きなモノまで無いとか言うんじゃねぇだろな?」
「…海かしら」
「海へ行くか」
海なんて、子供の頃以来、行ってないわね。凄く久し振りだわ。