長い夜の甘い罠【完】
その男の顔には見覚えがある。と言うより、忘れた事のない男の顔だった。
忘れたくても忘れられない、あの時の男。手に包丁を持ち返り血を浴びて血塗れになりながら私を見て立っていた男。
私の家族を殺しておきながら、悠々と合コンに出て女を引っ掛け様としている男。
私の復讐が芽生えた瞬間だった。
この十年間、私がどんな思いで生きて来たのか…この男は知らない。
分かって欲しい訳じゃないけれど、無性に腹が立つ。