長い夜の甘い罠【完】
正直な所、私は料理は得意じゃない。
けれど、この日の為におふくろの味と言われる煮物系は作れる様に努力した。
先ずは男の胃袋を掴めと何処かで聞いた事がある。
煮魚におひたしに味噌汁を作ると、男の帰りを待つ。
夜の九時。
男はまだ帰って来ない。
と言うかよくよく考えてみたら、帰って来るかどうかも分からない。
もし帰って来なかったら、ラップをして冷蔵庫に入れておけば良いか。
リビングのソファーに背を凭れ掛けさせ、瞼を閉じ男の帰りを待つ。