星屑チョコレート【短】
数秒もしないうちに停まったタクシーは、いつの間にか住宅街にいた。


そのまま車内に残ろうとしたあたしを、橋本君は難(ナン)無く連れ出す。


途端にひんやりとした空気が頬を撫で、その中に微かに混じった雨の匂いに包まれた。


「もう!何なのよ!」


ここまで来ると抵抗するのも面倒臭いとは言え、一人暮らしの男の家に上がるつもりは無かったのに…


「はいはい、こっちですよ」


橋本君は苛立ちを見せるあたしの背中をグイグイと押し、エレベーターに乗り込んで手早くボタンを押した。


無情にも動き出した箱は5階に着いた所でドアを開け、彼はやっぱり強引にあたしの背中を押し出した。


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