隣のぼーいふれんどサマ。
「俊哉くんー?起きてるなら昼食作るの手伝ってー。」
恵梨香さんが買い物袋から、食材を取り出す。
まだあたしに気づいていないようだ。
「すいません。俺ちょっと今、手離せなくて。」
だって俊哉の手はあたしの手と、しっかり繋がっているから。
「え?」
俊哉の声に反応し、こちらを見る。
「・・・何してるの。」
恵梨香さんがあたしを睨む。
「何もしてません。それより大事な話が」
「どこから入ったの?何しに来たの?留守の間に勝手に人の家に入るだなんて、泥棒と同じじゃない!」
俊哉の言葉を聞こうともせずに、あたしを怒鳴りつける。
「・・・少なくとも・・・。」
あたしの小さな声。
“大丈夫。”
今、繋がれている左手が、そう言っているような気がした。
「・・・少なくとも、ここは俊哉の家です。恵梨香さんの家ではないです。俊哉はずっといました。あたしは泥棒じゃありません。」
「・・・いい加減にしなさい!!屁理屈はいいのよ、早く出て行きなさい!警察呼ぶわよっ!!」
恵梨香さんがキッチンから包丁と持ってくる。
刃先はあたしに向けられる。
さすがに包丁にはビビって、体をびくんと震わせてしまう。
「いいですよ。」
そう言ったのは、俊哉だった。
「呼んでくださって結構です。」
ただ・・・、と俊哉の言葉が続いた。