隣のぼーいふれんどサマ。
どれだけの時が経ったのかな?
近くなる救急車の音。
あたしを抱きしめる俊哉の声。
ただ呆然と立ち尽くす恵梨香さん。
いつの間にか聖奈もそこにいた。
そのうち、雅も来るのかな?
そしてあたしを迎えにくるのは、パパ?ママ?
・・・嫌だよ。
まだそっちへは行けない。
「カズっ!!絶対に死ぬなよ!これからだろ!!」
ほら。俊哉もそう言ってるでしょう?
だからパパ、ママ。ごめんなさい。もう少しだけ俊哉と一緒にいさせて。
「カズっ!!」
何だろう、冷たいな。
あたしの頬に、涙が落ちたから。
あたし、泣いてないのに。
重い瞼を開けると、俊哉の大きな瞳から涙が零れていた。
初めてかもしれない。俊哉の涙を見たのは。
絶対に死ねない。
死なないよ。
今あるすべての力をつかって、俊哉の頬を撫でた。
「カズっ!」
声にならない声で、精一杯の想いを伝える。
“大好きだよ。俊哉。”
そしてそのまま、俊哉の腕に抱かれて、意識が無くなっていった。