隣のぼーいふれんどサマ。
涙を拭い見渡すと、窓辺に真っ白な光。
一瞬月の光かと思ったが、違う。
その光は人影に変わって、あたしは目をそらせなくなる。
そこに現れたのは、写真で見るお兄ちゃんと同じ人。
「・・・お、お兄ちゃん・・・智也お兄ちゃんなの・・・?」
頷き、微笑むその人は、紛れもなく智也お兄ちゃんだった。
「カズ。」
あたしを呼ぶ声。
覚えてないよ。
でもね、何となく懐かしいの。
「智也お兄ちゃんっ・・・!」
耳馴染みのない響き。
覚えてないよ。
でもね、やっぱり何となく懐かしい。
写真と夢でしか見たことないのに、智也お兄ちゃんだってすぐわかったし、過去の記憶がないのに、こんなにも泣けちゃうくらい嬉しくて懐かしい。
これはやっぱり、自分の中に刻み込まれてる記憶のせいなのかな?
覚えてる覚えてないじゃない、もう刻まれている、残っている記憶。
「俊哉は良い奴だから、意地悪でこれからもカズを泣かせるとは思うけど、信じてあげて。俊哉のこと、大切にしてあげて。」
「うん。」
「俺はずっと二人を見てるから。いつでもカズと俊哉の中にいるから。思い出せなくても大丈夫。俺はいるよ。」
「うん。」
お兄ちゃんの「大丈夫」は本当に安心できる。
お兄ちゃんが消えかかる。
「待って!・・・もう一回、カズなら大丈夫、って言って?」
「・・・カズなら、大丈夫だよ。」
あぁ、これが聞きたかった。これでもう大丈夫。
涙と微笑みが入り混じる表情で、お兄ちゃんが消えていく。
今確かなこと。これは夢じゃない。