隣のぼーいふれんどサマ。
あたしは震える手で、妻になる人の欄に名前を書く。
渡瀬和紗って書くのは、これが最後になるかもしれないんだ。
ゆっくり、ゆっくり全ての欄に記入していく。
あたしが記入し終わると、俊哉が笑ってまた何かを取り出した。
「とりあえず、目つむって。」
言われるがままに目をつむる。
左手に冷たい感蝕。
「・・・はい、いいよ。」
冷たい感触があった左手を見ると、薬指に小さく輝くシルバーリング。
「これ・・・」
驚いたあたしに向けられた笑みは、意地悪且つ、優しい微笑みだった。
「その左手の薬指、俺からの指環しかはめないって誓えよ。」
「何それぇっ・・・」
なんかわかんないけど、涙が止まんないよ。
こんな時までも、俊哉は俺様であたしの意見を聞かない。
でも、それでもいいかなって思っちゃってる。
だって今、あたしは涙で話せないから。
「何?嬉しくて泣いてんの?」
「だってぇ・・・」
嬉しいに決まってるじゃん。
女の子なら誰だって一度は夢を見る。
大好きな人と結婚して、ずっと一緒に暮らすことを。