隣のぼーいふれんどサマ。
「はーい。俊くんは今、シャワールームにいまーす。」
甘ったるい、ケーキみたいな女の子の声。
どう考えても俊哉の声ではない。
しかも居場所がシャワールーム・・・?
返事が出来なかった。
話そうとするのに、声が出ない。
「もしもーし?誰ぇ?」
あたしが何も話さないでいるため、向こうの音がよく聞こえてくる。
「おーぃ。・・・あ、俊くん!」
その女の子から“俊くん”という言葉が聞こえて、ケータイを危うく落としそうになる。
俊くん=俊哉という確信はまだない。でも・・・
「んー?あ、お前何で勝手に出てんだよ!返せよ!!」
「えーだって俊くんが悪いんだよ、シャワー長いんだもん。」
向こうから聞こえてきた声は正しく、俊哉の声だった。
あたしが聞きたかったその声は、あたしが聞きたくない言葉を発する。
「おぃ、セーナ!!いい加減返せって!・・・もしもし。すいませんどちら様ですか?」
“セーナ”
それは確実に甘い声の女の子の名前を示すものだった。
どちら様ですか?という俊哉の声を聞いた瞬間、ついにケータイがあたしの手から落ちていった。