バレンタインデーと彼女の秘密
発覚と追及
あたし、見たんだから。
チエリの押し殺した声が、薄暗い教室全体に伝わる。
教室は閑散としていて、窓際にあるカイトの机を照らすように、そこだけ電気が付いていた。
「何を見たんだよ?」
窓の向こうに立っているチエリに目線を合わせるため、
少し窓にもたれつつカイトは聞く。
「何って…しらばっくれるつもり?
あんた、ユウカに あたしが作ったバレンタインのチョコ、あげたでしょ!」
信じらんない!と憤るチエリに対し、カイトの態度に変わった様子はない。
「…とりあえず、そんなところじゃ寒いし、先生にバレたらヤバいだろ。教室入れよ。」
チエリやカイトたち3年生は、自宅学習期間に入っている。
しかしカイトのように期間中、学校に来る用事がある生徒は制服着用と厳しく決められている。
今、チエリが私服で学校に来ている姿が先生に見つかろうものなら、
カイトを糾弾するどころか、チエリに生徒指導教諭からきついお叱りが下るだろう。
窓の外は中庭だといえ、その向かいの校舎1階にある職員室から
この教室が丸見えなことに変わりはない。
チエリは仕方なさそうな顔をした後、急いで窓から教室に入った。