Octave~届かない恋、重なる想い~
「私のような地味で冴えない女が妻であることをアピールするのはどうかと思ったまでです」
「……?」
三人掛けソファの端と端に座っている私達は、身体を斜めに向けて、向かい合うように座っている。
声を出さずにいる雅人さんを見てみると、眉間にしわをよせて、考えている。
「それに、いずれ離婚するかもしれないとなれば、あまり私を出すのも……!」
最後まで話せなかった。
突然、抱き寄せられた。息もできないほど強く。
私の頬に、雅人さんの胸がぴったりくっついていて、ちょうどそこが心臓のあたりで。
おそらく、私もこれくらいの速さで心臓が動いているのだろう、というかなり速めの鼓動が聴こえる。
どうしていいのかわからず、そのまま固まってしまう。
10秒……30秒……1分ほど過ぎただろうか。いや、ほんの一瞬だったのかも知れない。
雅人さんがふっと力を抜いた。そして。
「俺は、君と結婚した。だから君だけが俺の妻だ。俺に必要なのは宇佐美結子だ」