Octave~届かない恋、重なる想い~
「駄目だ。許さない。ちゃんと説明するまでは」
「……ひっ……うっ……、ごめ、なさ、い」
ちゃんと説明しないと、と思っているのに、喉がひりつき、嗚咽が漏れる。
憧れの人、一番好きな人にこんなに迷惑をかけて、ろくに弁解もできず、ただ泣いてしまう自分が嫌だ。
なのに、そう思えば思うほど、涙が溢れて言葉が出なくなる。
涙で滲んでぼやけた視界のまま、隣に座る雅人さんを見た。
すると、怒りの表情が消え、穏やかないつものまっすぐな目が私を見下ろしていた。
「結子、待ってるから。慌てなくていい」
さっきよりずっと落ち着いた声で、語りかけられた。
「でも、これだけは聞かせて欲しい。本当に、まだ生徒に金を渡してはいない、おろしただけ。そういうことか?」
責めるような口調ではなく、ゆっくりと。
私は首を縦に振った。
「良かった。間に合った」
心底ほっとしたような声でそう言い、雅人さんは私をぎゅっと抱き寄せた。
こんな時だというのに、雅人さんが優しくしてくれた、という安堵感から、ますます涙が止まらなくなった。