Octave~届かない恋、重なる想い~

「そうか。それで結子は自分のお金で建て替えてやろうとした訳だな?」

「はい……まさか、そんなことまで連座制適応になるなんて考えてなくて……」

「普通なら、美談になるところだと思うよ。でも、見方を変えてみると、それが本当に生徒のためになるのか、俺は疑問だな」

「え?」


 選挙のことであれば、素直に私の判断ミスだと言えた。でも、雅人さんは『生徒のためにならない』とも考えている。

 どういうことだろうか。


「仮に、今回は結子のお金で修学旅行へ行けたとしよう。その時は良かったと思えるかも知れない。だけど、その後は? 卒業アルバムを買う金がない、進学したいのに金がない、高校合格したけど制服が買えない、高校の修学旅行費がない……全部これから先も結子が面倒を見るのか?」

「無理、だと思います」

 そんなに助けることは不可能だし、本来は保護者がするべきことなのだから。


「持続可能な支援でない限り、一度でも情けをかけて希望を持たせるのはかえって残酷だ。また助けてくれるだろうと思ってすがってきた相手を、結子は振り払うことができるのか?」

< 133 / 240 >

この作品をシェア

pagetop