Octave~届かない恋、重なる想い~
「君の元教え子が、母親の恋人……将来、義理の父親になるかも知れない男に、襲われそうになっていたとしたら、どうする?」
「え? まさか?」
立花さんは今日、私に色々なことを話してくれた。
けれど、母親の彼氏についての愚痴は聞いたけれど、そのような話は何もなかった。
もし、今までにそういったことをされたり、されそうになったりしたら、彼女のことだから全力で抵抗して逃げているはず。
そして、話のついでに相談してくれるのではないだろうか……。
信じられない。彼女がそんな被害に遭うなんて。
私の表情をじっと見て、雅人さんは静かに首を横に振り、はぁ、と溜息をついた。
「本当に結子は箱入り娘だな……家に帰りたくないってその子は言ってんだろう? 俺なら母親の恋人からの性的虐待をまず真っ先に疑うね。本当に修学旅行費がないのか、学校に確かめてみるといい。もしかしたら家出に必要な資金を集めようとしていたのかも知れない」