Octave~届かない恋、重なる想い~
「嘘……」
「まずは担任に連絡することだな。旅費が納入されていたとしたら、その子が結子に説明していたことは真っ赤なウソだ。だけど金が必要で、自宅以外の居場所を求めている。……まだ、家に着いてないかも知れないぞ」
そう言われて気がついた。
立花さんは制服のまま、うちへ来た。
午前授業だから、普通なら家で着替えてからここへ来ても良かったはず。
いや、制服のまま家に一度帰ったのかも知れない。
だって、学校からまっすぐ来たと言っていたのに、彼女は学校用のカバンを持っていなかった。
今考えてみると、不自然なことがたくさんあった。
日曜日、ショッピングモールで会った時も、もしかしたら家に居たくないから、ずっとぶらぶらしていたのかも知れない。
今日は給食がないのであれば、12時には下校になっていたのだろう。
昼間働いているお母さんは留守。家には『無職のオヤジ』しかいなくて、制服姿で帰ってきた立花さんを見て……!
彼女は逃げてきたのかも知れない。
安全な場所を求めて。
お母さんには言えず、友達にも絶対に知られたくない秘密を抱えて。