Octave~届かない恋、重なる想い~

 私は携帯の電話帳から、かつての同僚の番号を検索した。

 立花さんの担任は持ち上がりだから……あった。

 震える指で、その番号に電話をかける。



 ……担任によると、雅人さんが考えた通り、修学旅行費は既に振り込まれていた。

 旅行会社への支払い期限が先週で、市役所から直接、修学旅行費として納入されていた、と。

 母親の恋人の存在は担任も知っていたそうだ。ただ、彼女にとって嫌な存在だという話は知らなかったらしい。

 担任は男の先生だから、そんなことは言えなかったのかもしれない。


 心配だったので、担任からお母さんに連絡を取ってもらうと、やはりまだ帰ってきていないことがわかった。

 私は今までの経緯と、母親の恋人の存在がもしかしたら家に帰りにくくしているのかもしれないということ、それと、もしかしたら性的虐待の可能性もあるかも知れないという話をして、電話を切った。

 私が担任とやりとりしている間、雅人さんもずっと話を聞いていてくれた。

< 137 / 240 >

この作品をシェア

pagetop