Octave~届かない恋、重なる想い~
そして先ほど、立花さんは私のパジャマを着て、私のベッドへ入った。
「ここって客間、だよね?」
いいえ、本当は私の部屋で私のベッドだけど、と一瞬戸惑っていたら。
「そう。遠慮しないで使っていいよ。俺達の寝室は向こうの部屋だから」
雅人さんが先に答えた。ポーカーフェイスで。
ちなみに向こうの部屋は雅人さんの寝室。
「せんせい、ごめんね~。新婚さんのおうちにお邪魔しちゃって。うちは一度寝たら目覚まし鳴っても起きないから。せんせいが起こしに来るまで爆睡だからね~。おやすみ~」
立花さんは私と雅人さんを見て、意味ありげに笑った。それからおやすみの挨拶をして私の寝室のドアの向こうへ消えた。
後に残された私と雅人さんは、ほぼ同時に溜息をついた。
雅人さんにとっては、初対面の女子中学生を家に泊めることになってしまうという、波乱に満ちた夜だった訳で、私はいたたまれない気持ちになった。
「すみません。ご迷惑をおかけしました」
「いや、気にしないよ。それより……話したいことがある。寝室へ行こう」
あえて寝室と表現された雅人さんの部屋で話したい、ということは、立花さんが私の部屋で聞き耳をたてても聞こえないようにするためだろう。
「はい」
私はすぐに同意して、雅人さんの部屋へ。