Octave~届かない恋、重なる想い~
私の手では、無理だということが理解できたのだろう。
雅人さんは、話題を変えてくれた。
「小さな手でこれだけの曲を弾けるって、凄いね。
沢山練習した努力がわかるよ。
……ところで、結子さんは今、何歳?」
そろそろ成長期も終わりを迎える歳になったというのに、私はずっと変わらないまま、というのが淋しい。
けれど、我が家は母が小柄だから、母に似た私もきっとこのままだと覚悟している。
「15歳、中3です」
「ええっ? 受験生?」
「一応、そうです」
私の歳を聞いて驚いている、ということは、また実年齢より幼く見られていたのだろう。
「じゃあ、受験勉強、頑張ってるんだね」
「それなりに、ですけれど……」
受験生、という言葉に反応したのだろうか。
父が突然会話に入ってきた。
「そうだ結子、そちらの佐藤君に勉強を教えてもらうといい。
彼は現役でH大に合格したそうだから」