Octave~届かない恋、重なる想い~

「立花さん、どうしたの? 眠れない?」

「……違うの」

「じゃあ、何かあった?」

「……」

 答えてくれない。どうしてだろう。

 ドアを開けたままでは雅人さんがますます寝付けなくなるだろうと考えて、ドアを静かに閉めてから、寝室の外で対応することにした。

「とりあえず、リビングで話そう」


 リビングのソファを勧めたけれど、立花さんは座ろうとしない。

 不思議に思って私も座らずに立っていると、ようやく口を開いてくれた。

「せんせい、生理用品、貸してください。いきなりなっちゃって……」

「そういうことだったの……。ちょっと待っててね」


 さっきまで立花さんが寝ていた私の部屋へそれを取りに行こうとしたところで、気が付いた。

 まさか、昼間、母親の彼氏に襲われて、それで……?


 どうしよう、どうやって本人に確かめたらいいのだろう。

『本当に生理なの?』っていうのは絶対におかしい。かといって他に何て聞けば?

『お薬もいる?』はどうだろう。

 ……待って! もし、本当に襲われてしまったのだとしたら、今必要な薬は鎮痛剤ではない!

 緊急避妊薬は確か、四十八時間以内のできるだけ早いうちに飲む必要があったはず。

 それをどうやって、切り出せばいいの?

 未経験の私には、荷が重すぎる!!

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