Octave~届かない恋、重なる想い~

 用意したものをすぐ立花さんに渡し、もう一度シャワーを浴びてもいいこと、洗濯物はすぐ洗濯機に入れてくれたら、シャワーを浴びている間に洗っておくと伝えた。

「他にも何か、欲しいものはない? お薬あげようか?」

 やっぱり私には、これ以上踏み込んだことは聞けない。

 それでも、心の底から彼女のことを心配しているのだということは、伝わっただろうか。

「ううん、これで十分。これ以上望んだら、ばちが当たるよ……」

 そう言いながら、立花さんはまた涙を流しはじめた。

「いいのいいの。気にしないで。私じゃ頼りないかも知れないけれど。あのね、お金以外のことだったら、相談にのるよ」

 ゴタゴタしていて伝えられなかったことも含めて、シャワーの後で立花さんと話すことにした。


「修学旅行費のことだけど、あれ、本当に未納だったのかな?」

 できる限り優しく、でもストレートに聞いてみた。

「ううん……うち、旅行費は直接振り込みになるっておかんが言ってた」

「やっぱりね。そうじゃないかと思ったの。じゃあ、どうしてお金が必要だったのか、教えてくれないかな?」

 すると、立花さんが涙をバスタオルで拭きながら、こう言った。


「おかんの彼氏に脅されたの。三万用意しろ、できなきゃ体で払えって」

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