Octave~届かない恋、重なる想い~
そんなの、無理に決まっている。中学生の立花さんができるアルバイトなんて、新聞配達くらいしかない。
そういうまともな方法ではなく、体を使ってお金を稼ぐことを強要しているその男が、心底憎らしい。
いや、中学生の立花さんが風俗関係でお金を稼ぐとなれば、かなりの危険が伴う。
第一、リスクが高すぎる。
おそらくそうではなく、立花さん自身にその男が危害を加えようとしているのだとしたら。
「……許せない」
「うちだって許せないよ! でも、あの男がいる限り、うちもおかんもまともな生活ができない……」
「お母さんも? お母さんは彼氏が好きで一緒にいるんじゃなかったの?」
「最初はいい人だったよ。でも、騙された。言うこと聞かないとおかんもボコボコにされるから言いなりになるしかなかったし」
つまり、最低のDV男だということだろう。
まだ立花さん自身はその男に襲われていなかったということだけが、不幸中の幸い。
児童相談所へ通報しておいて良かった。
雅人さんからの助言がなかったら、このまま単なる家出だと思われて、最低男のいる家に戻されていただろう。
性的虐待の疑いが濃厚であるという本人からの訴えもあったので、立花さんはしばらく間、その最低男から離れて一時保護、もしくは施設入所の措置となるだろう。
ただし、心配なのは立花さんのお母さんだ。
うまく児童相談所と警察が連携してくれたらいいのだけれど……。