Octave~届かない恋、重なる想い~
立花さんの不安を払拭するため、私は今までのことを児童相談所へ『相談』したこと、学校も親身になって立花さんを探してくれていたこと、明日学校で児童相談所の人が待っていることを伝えた。
「それって、うちだけ家から離れることになるの?」
「とりあえず、あなたの身の安全を確保することが最優先なの。児童相談所は児童生徒の一時保護をしてくれるけれど、お母さんまでは……」
そこまで話したところで、立花さんはまたしゃくりあげて泣いた。
「じゃあ、おかんはどうなるの? きっとあの男に殺されるよ!」
「絶対に、殺させない」
低く、よく響く声がリビングに拡がる。
私と立花さんがはっとして声のする方を見ると、パジャマ姿の雅人さんが仁王立ちしている。
雅人さんが寝室から出てきていたことにも、今までの会話を聞いていたということも、全く気付かなかった。
「今の話、悪いけど聞かせてもらったよ。今までよく我慢したね。辛かっただろう」
ますます激しく泣きじゃくりながら、立花さんはこくりと頷いた。