Octave~届かない恋、重なる想い~
「そうなんですか!? すごい……」

「いや、受験勉強はコツさえ掴めば難しくないから」

「そのコツを結子に伝授してもらえないだろうか? 
ああ、家庭教師代はもちろん払うから……」

「いえ、そんな。
僕で良ければ趣味としてやらせてもらいますよ。
それにうちは副業禁止ですから、ね、社長?」


 伯父も大きく頷いて、私達の話に加わった。


「ああ、佐藤の言う通りだ。
会社が休みの時はここで結子ちゃんの勉強を見てやる代わりに飯をたっぷり食わせてもらえばいい。
休日は寮にいても飯が出ないからな」


 こうして、受験が終わるまでの間、塾の時間の隙間に雅人さんとの勉強の時間も組み込まれることになった。

 毎週日曜日、リビングで勉強を教えてくれる雅人さんは、教え方が上手だった。

 私の部屋ではなくリビングで、というのは、雅人さんが言い出した事。

 休憩時間に私のピアノが聴きたいからだと言っていた。
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