Octave~届かない恋、重なる想い~
私達のやり取りを聞いて心配になった雅人さんが、立花さんを説得する役を引き受けてくれたのだと感じた。
「君がこのまま家に戻るのは危険だ。今すぐ保護してもらった方がいい。ただし、君が保護されたことを知ったらますますその男がお母さんに酷いことをするかも知れないから、お母さんにも同時に逃げてもらう」
「……どこに?」
「それは、君にも言えない。もしその男に脅迫されても、君が居場所を本当に知らなければ答えようがないから。お母さんのために知らせないでおく。でも、君がこれから行くところと同じくらい安全なところだと思うよ」
「本当に? おかん、あの男にやられない?」
「もしも連れ戻されそうになった時、どれだけ甘い言葉を囁かれても、君のお母さんがその男を突っぱねることができればね」
「じゃあ、おかんに連絡しなくちゃ。荷造りしといてって」
「ダメだ。それをすればバレてしまう。必要最低限のものだけ普段使っているハンドバッグか何かに入れて、君のことで朝から学校へ呼び出されたことにすればいい」