Octave~届かない恋、重なる想い~
時刻は六時ちょうど。立花さんは七時少し前に起こしてあげよう。
雅人さんから借りたパジャマから洋服に着替えるため、仕方なく自分の部屋へそっとノックしてみたけれど、立花さんはぐっすり眠っていて、全く気が付かないようだった。
クローゼットから服とバッグを出して、そっと部屋を出た。
寝不足の彼女が、少しでも長く眠っていられる時間を確保するため、朝御飯はすぐに食べられるものを準備。
茄子と長ネギのお味噌汁、卵焼き、きゅうりと白菜のお漬物、納豆は……時間がかかるから今日は却下。
鮭を焼いて、常備菜のかぼちゃの煮物を一切れ。
あとはふりかけを置いておけば、だいたい二十分以内で食べきれる朝御飯、完成。
浴室からシャワーの音が消え、雅人さんが出てきた。
まだ少し濡れている髪をバスタオルで拭きながら、ダイニングテーブルに座ってこちらを見ている。
この光景には慣れたつもりでいたけれど、バスタオルを掴んでいる大きな手を見た時に、なぜかまた緊張してしまった。
「先に食べてもいいか?」
「どうぞ。私も食べてしまいますね」