Octave~届かない恋、重なる想い~

「……昨日のメッセージ、ですよね。私もそれは気になっていました」

「もしかしたら、学校にその男と二人で来るかも知れないぞ」

「そうなったら、どうすればいいですか?」

 少しの間、雅人さんは目を瞑って考えていた。そして。

「立花さんの進学も含めて母親と話がしたいという感じで、校長室に呼び出してもらうことができれば……。身内以外に内申書は見せられない、とか言って、とにかく母親と男を別行動させるしかないな」

「わかりました。立花さんの担任に連絡しておきますね」

「ああ。うまくいけばいいな……」


 食べ終わった雅人さんは、食器を下げて寝室へ向かった。

 それとほぼ同時に、セーラー服に着替えた立花さんが戻ってきたので、私はご飯を少し多めに盛りつけた。


「いっただっきま~す!」

「どうぞ、召し上がれ」

 立花さんの明るい声が響く。

 客間、という名の私の部屋に置いてあったぬいぐるみのこと、私が使っているシャンプーのこと、私が今着ているカットソーのこと。

 可愛いものが大好きな、ごく普通の中学生……だったら良かったのに。

 これから先、どこへ行こうとも、きちんと三食食べて、暴力に怯えることなく、明るく過ごして欲しい。


 そのための第一歩が、これから始まる。

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