Octave~届かない恋、重なる想い~
 ほんの3ヶ月程の間だったけれど、私の成績はぐんぐん伸びて、無事に志望校へ合格した。

 それ以来、高校の定期考査が近づいた時や、大学の推薦入試前にもお世話になっていたけれど、私の大学合格を期に雅人さんは我が家へ来なくなった。

 きっと、好きな人が出来たんだ。

 週末やお正月もデートで忙しくて、ここへ来る暇なんてないんだ。

 雅人さんはその時、26歳。

 やっと高校を卒業する私はまだ18歳。

 いくら私が想いを寄せたとしても、彼は離れていく。

 最近は年賀状のやり取りしかできなくなったけれど、その年賀状を見ながら密かに安心していたこともあったのだけれど。

 ずっと、雅人さんの名前だけが印刷された葉書が届いている。

 連名の……奥さんの名前が付いた葉書を見るのが怖かった。

 できれば、雅人さんの赤ちゃんの写真つき年賀状が届く前に、私も新しい恋を見つけよう。

 その方が傷つかずに済むから。

 そう思いながら、彼の事を忘れようと努力した。


 それなのに……。
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