Octave~届かない恋、重なる想い~
「綿貫龍司(わたぬき・りゅうじ)です」
「ワタヌキ、はわかる。名前の漢字は?」
「難しい方の龍っていう字に、司会者の司」
「了解。割と珍しい名前だからすぐに見つかるな」
スマホでその名前を検索しているらしい。
「あった。Facebookのアカウントを見つけたよ。あと……やっぱり前科があるな。新聞記事が出てきた」
「マジで? 知らなかったよ! 知ってたらおかんが付き合うの、全力で止めたのに!」
ますます怯える立花さんと、スマホの画面を凝視する雅人さんに、先生方が玄関に集まってきたことを知らせる。
「職員玄関に、先生方が着いたみたい」
「わかった。このまま職員玄関に車を横付けするから、結子と立花さんはすぐに降りて中に入るんだ。それから、できれば管理職に出てきてもらって、お母さんだけを校内に呼べるよう、手はずを整えて。いいね?」
「やってみます。立花さん、荷物を持って。車が停まったらすぐドアを開けて玄関に入るの!」
「うん……それじゃあ、宇佐美せんせいの旦那さん、ありがとうございました」
「こんな時なのに、ちゃんとお礼を言える君は偉い。落ち着いたらまた遊びにおいで。じゃあ、一気に行くぞ」