Octave~届かない恋、重なる想い~
「はああ? 俺をバカにしてんのかこの学校!」
母親の彼氏もキレた。わざとらしく腕まくりをして、ちらりと刺青を見せている。
担任に接近してにらみつけながら。
……このパターン、もうこの学校ではおなじみなのだけれど。
「違いますよ。落ち着いてください。ええと……」
教頭先生も、母親の彼氏を何と呼んでいいのか困っている、というか、困っているふりをして、部外者であることを印象付けようとしている。
「お前らじゃ話になんねえんだよ! 校長出せ! サシで話させろや!」
出た。またこのパターンかと、その場にいた先生方が顔を見合わせる。
責任者出せ、と言いながら校長先生と一対一ならどうにでもなると思っているのだろう。
「申し訳ありませんが、冷静にお話ができる状態ではなさそうですよね。お引き取りください」
「ああン? 校長出せねぇとかビビってんのかよ! 校長出すまで動かねえからな!」
また、先生方みんなで顔を見合わせる。
……そろそろ、やってみる?
副担任が、こっそり私に目線を送ってきた。何かきっかけを作ろうとしているのだろう。
……じゃあ、私が。
口を小さく動かした。
……よろしく。
副担任も、他の先生もそれだけで理解してくれたようだ。頷いてくれた。