Octave~届かない恋、重なる想い~
男が私に本気で掴みかかろうとした、その時。
「すみません、私、この人連れて帰りますから!」
立花さんのお母さんが、男の腕を引っ張って玄関の外へ出ようとした。
「は? 今更何言ってんだ? 俺が何でお前の指図受けなきゃならねえんだよ!」
「そういうことじゃないの。忙しいって自分で言ってたでしょう?」
お母さんとしては、これ以上もめ事を増やしたくない一心でそう言いだしたのだろう。
でもここでお母さんと男が一緒に帰ったら、お母さんへのDVはますます酷くなってしまう。
何とかして、お母さんだけを引き留めなくては。
「立花さん、どうかお子さんの進路を、一緒に考えさせてください。私達にできることを、提案させてください!」
「だから何で俺だけ邪魔者扱いされなきゃならねえんだよ!」
男はついに、立花さんのお母さんを突き飛ばした。
「きゃっ!」
お母さんの身体が、玄関ドアに当たった。