Octave~届かない恋、重なる想い~
立花さんは児童相談所に一時保護されることになり、立花さんのお母さんもシェルターへ一時的に身を寄せることとなった。
これで一安心、と思ったが、最後にあの男が言っていたことが少しだけ気がかりだった。
立花さんが、私のことを『ちょろいお嬢さん』だと言っていたということ……。
中学生くらいになると、担任・教科担任問わず、気に入らないことをする教員はすぐ目の敵にされてしまう。
だからと言って迎合することももちろんできないので、細かく指導をする教員、厳しい指導をする教員、逆に放任する教員などは陰で色々なことを言われる。
それはもちろん、覚悟の上で仕事をしているけれど、やっぱり私だって傷つく。
良かれと思って世話を焼いた結果が『ちょろいお嬢さん』という評価だったとしたら、私は何を信じればよいのだろう。
でも、これが立花さんの私に対する評価だとすれば、受け入れるしかない。
最後に保健室で立花さんと話した時、彼女は泣いていた。
「せんせい、迷惑いっぱいかけてごめん。もしかしたら、これからもかけちゃうかも……」
「気にしないで。私達はいつでもあなたの味方になるから」
雅人さんと私、二人でまた遊びに来る日を待っていると伝えると、彼女はまた号泣した。
「ごめんなさい、ごめんなさい」と繰り返して……。