Octave~届かない恋、重なる想い~
立花さんが来た日から、二週間が過ぎた。
あの日以来、雅人さんとはまた別々の部屋で過ごしているけれど、以前よりは距離が縮まったような気がする。
私が雅人さんの部屋へ行き、朝、起こすことが当たり前になった。
今までは自分で起きていたのに、最近は「自分では起きられない」と言いながら、起こしてもらうのを待っているようだった。
今朝は寝ぼけていたせいか、起こしに行った私の手を掴んで、そのままベッドへいざなわれるところだった。
「雅人さん! 起きなきゃ遅れますって!」
「あと五分……一緒に、寝よう」
「ダメですってば!」
「気持ちいいから、一緒に二度寝しよう」
「絶対にダメです! 二人で寝たら誰も起こしてくれませんから!」
「……結子は、俺と寝たくないのか」
愁いを帯びた……いや、ただ単に寝ぼけただけの眼でそう誘われても、私の答えはひとつ。
「ダメって言いだしたのは雅人さんですよ! ずるいです!」
すると、雅人さんはこう返してきた。
「結子が可愛いから『偽装結婚』を守れる自信がなくなってきた」