Octave~届かない恋、重なる想い~
「な、な、なっ!!」
言葉にならなくなった。多分今の私は今にもバチバチと弾けだしそうな線香花火の火の玉のような赤色だ。
「ははは。冗談だよ。言ってみただけ。でも、今のでやっと目が覚めた」
豪快に笑って、勢いよくガバッと起き上がった雅人さんの姿を見て驚いた。
上半身、裸だった。
かなりがっしりした肩、腹筋はきっちり割れていて、胸板も厚くて……いや、見ちゃダメでしょう私!
一人でぼうっとして真っ赤になって素に戻って、忙しい朝だ。そうだ朝だった!
「し、失礼しましたっ!」
「またいつでもどうぞ」
おかしい。確か新婚初夜に色々取り決めをしたはず。
離婚するのであれば、そういった面倒なことがない方がいいと言い出したのは雅人さんだった。
最近の雅人さんは、少しずつその『面倒なこと』を楽しもうとしているような言動が増えた。
もしかすると『偽装結婚』であることに、罪悪感が芽生えたのだろうか。