Octave~届かない恋、重なる想い~
いや、もしかしたら全然違う相手かも知れない。
雅人さんに個人的な恨みを抱いている相手も、きっといる。
落選した候補にとっては、雅人さんの立場は恵まれすぎているように見えるだろう。
父に恨みをもつ人間という可能性もある。
考えたくはないけれど、私のことを嫌っている人だっているはず。
生徒にとっては、口うるさくて煙たい存在の私。
保護者にとっても、子どもを産んだ経験もないのに偉そうな女だと思われても仕方がない。
みんなが私達を嫌っているかも知れない。
嫌われても気がつかないまま、毎日呑気に暮らしていただけ。
……偽装結婚であることは、私と雅人さんしか知らないはずだった。
私の家族すら、疑ってもいないはず。
なのにどうして、こんな書き込みがあるのだろう。
私達の様子を見て、不審な点でもあっただろうか。
もう、何を信じていいのかわからない。
見えない相手からの攻撃が、私を疑心暗鬼にさせる。
パソコンの画面をそのままにして、私はリビングのソファに倒れ込んだ。