Octave~届かない恋、重なる想い~
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「結子、結子? 結子!」
切羽詰まった雅人さんの声で起こされた。
いつの間にか、ソファの上で眠ってしまったらしい。
「あ……雅人さん」
寝ぼけて目をこすりながら上半身を起こすと、雅人さんがぎゅっと抱きしめてきた。
眠気も吹っ飛ぶような状況に、目が回りそうだ。
「良かった。起きた」
頭をぽんぽんしながら、私の顔を覗き込み、ほっとしたような笑顔を見せた。
「すみません。何だか疲れて、現実逃避してしまいました」
そう伝えると、雅人さんが顔を曇らせた。
「あれ、見つけてしまったんだな」
掲示板のことを指しているのだと、すぐにわかった。
うっかり、あの画面を開いたままだったから。
「ずっと、雅人さんひとりで悩んでいたのですね。私、何も知らずにいました」
私は雅人さんの腕の中で、ため息をついた。
何も知らされず守られるだけの存在だったと改めて自覚して、悲しくなった。