Octave~届かない恋、重なる想い~
「……知られたくなかったよ。あそこに書かれていることは、全てが嘘、という訳ではないから。あんな悪意に満ちた『本当』を突きつけられたら、鋼のメンタルの俺でもちょっと凹む。ましてや結子は箱入りのお嬢様……」
この言葉、掲示板に書かれていたのと同じ。
私はもう、お嬢様ではないというのに。
ちゃんと伝えなくては。この掲示板の通りだと思われないために。
雅人さんの腕の中、勇気を出して上を向く。
すぐそこに、心配そうな表情が私を見下ろしているのがわかり、あまりの近さに鼓動が速くなる。
「結婚して妻になったのですから、箱入り娘ではありません! 一緒に苦労するのが夫婦ではないですか?」
「結子はどこまで俺と一緒にいるつもりなんだ? 淳史君が被選挙権を得るまでか?」
「雅人さんはどう考えているのですか?」
私は逆に問い返した。
「……俺にそれを決める権利はない。だから、永続的な関係を望むのであれば、俺と別れてから……」
「嫌です!」
間髪入れず叫んだ。