Octave~届かない恋、重なる想い~

 その日のうちに、私達は実家へ向かった。

 車の中で、雅人さんと計画を練る。


「誹謗中傷のことは、今はまだご両親の耳に入れないようにしよう」

「その方がありがたいです。余計な心配をかけるだけで、解決には結び付きませんから」

「君は、どんな披露宴にしたいのかを考えて説明して欲しい。どこの会場を使って、どのくらいの規模で、何をしたいのか」

「わかりました。でも、私に全部任せてしまってもいいのですか?」


 一瞬、間があった。


「俺の親族席はいらない。友人数名と、宇佐美運輸の社員、市議会議員を招待して欲しい。あとは結子が勤務していた中学校の同僚全員。これだけ呼べば、あれを書いた奴の耳にも俺達が盛大に結婚式を行ったことがわかるだろう」

「そう、ですね」

 実は親族を招待できない雅人さんのことも考えて、今まで私から『結婚式』の話を切り出したことはなかった。

 結婚は家と家との結びつき、などということは、私自身は考えていなかった。

 けれど、出席者が雅人さんのことをどう見るのか、少し不安だったということもあり、もし本当の夫婦になれたら、二人だけで式を挙げるのもいいな……と夢見ていた。

 せめて、その希望だけは叶えたい。

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