Octave~届かない恋、重なる想い~
今日出された桜茶が、その何よりの証拠だった。
おめでたい話にぴったり、しかもカフェインレス。
雅人さんも両親の様子にすぐ気がついたらしい。
「初孫の話をご期待されていたのだとしたら、すみませんでした。その前にどうしてもしておきたいことがあります」
雅人さんの言葉に、両親が顔を見合わせてちょっと笑っていた。
電話をもらってから、きっとその話でもしていたのだろう。先走ってしまったことを照れているように見える。
「ふふふ。孫の話ではないとしたら、結婚式、かしら?」
母の言葉に私が答える。
「正確に言うと、披露宴をしたいと思ったの。お父さんに見て欲しかったから」
すると、父が驚いたような顔をして、声を出した。
「結子……待ってて、くれたのか?」
「お父さん、二時間も座っていられる? お父さんの負担にはなりたくないけれど、できれば出席して欲しいなって……」
「大丈夫、大丈夫」
お父さんは、精一杯笑顔を作ろうとしている。少しやせてひきつった笑顔だったけれど、私はこの笑顔のためにこれから先も覚悟を決めて嘘をつく。
「私の花嫁姿が最後まで見られるように、リハビリを続けて欲しいの」